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新築に床暖房を設置すると後悔する?メリット・デメリットや電気式と温水式の違いについて解説
冬の寒い季節は、足元からじんわりと体を温めてくれる「床暖房」があるととても快適です。
ただ、床暖房は設置費用が高額になるだけでなく、光熱費やメンテナンス費用も高くなりがち・・・。
限られた予算を、床暖房に回しても良いものかどうか悩まれている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、床暖房のメリット・デメリットや床暖房の設置が向いている人について解説していきます。
床暖房の設置を検討するときに押さえておきたい3つのポイント
新築で床暖房を導入するか否かを検討する際に、まずは次の3つのポイントを押さえておきましょう。
- ①床暖房の種類や性質について正しく理解する
- ②住宅の性能に合わせて導入を検討する
- ③予算配分の優先順位を決める
それぞれ解説していきます。
ポイント①:床暖房の種類や性質について正しく理解する
床暖房には「部屋が乾燥しにくい」などのメリットがある反面、「コストが高額になりがち」といったデメリットもあります。
また、床暖房の種類には「電気式」と「温水式」の2つのタイプがあり、求める機能によって選び方が変わります。
床暖房についてしっかり理解した上で、家族にとって必要な設備かどうかを検討しましょう。
ポイント②:住宅の性能に合わせて導入を検討する
昨今は、高気密・高断熱で性能の良い住宅が増えており、床暖房の必要性があまり感じられなくなってきました。
なぜなら、高性能住宅では床下の断熱性が高く、足元からの冷えを感じにくくなっているためです。
床暖房は、住宅の性能に合わせて導入を検討すると良いでしょう。
ポイント③:予算配分の優先順位を決める
床暖房の設置費用は、決して安い金額ではありません。
家を建てる予算には限りがあるため、(床暖房に限らず)新しい住まいでどんな暮らしをしたいのか、どんなことにお金を掛けたいのか・・・といった「優先順位」をつけることが大切です。
「お風呂の機能をグレードアップしたい」
「壁をクロスからタイル貼りに変えたい」
「インナーガレージにしたい」
など、床暖房以外にもお金を掛けたいところがあるかもしれません。
優先順位が曖昧なまま「何となく」で床暖房を入れると、後悔してしまう恐れがあります。
新築で床暖房をつける6つのメリット
床暖房には、次の6つのメリットがあります。
- ①室内のホコリが舞い上がらず、乾燥もしにくい
- ②室内を効率よく暖められる
- ③掃除がいらない
- ④設備が露出していないので部屋が広く使える
- ⑤火事の心配がない
- ⑥ヒートショックの予防につながる
1つずつ解説していきます。
メリット①:室内のホコリが舞い上がらず、乾燥もしにくい
床暖房は、電気ヒーターや温水によって床を加熱し、加熱された床から放射される熱(輻射熱)が部屋全体を暖めるという仕組みです。
「輻射熱」とは、電磁波(赤外線)で熱を伝えるもので、温風による「対流熱」で部屋を暖めるエアコンなどとは違い、風を出さないのでホコリが舞い上がらず、空気も乾燥しにくい特長があります。
メリット②:室内を効率よく暖められる
床暖房といえば、足元だけが温かくなるイメージですが、実際は床暖房による熱(輻射熱)によって部屋の中全体を均一に暖めてくれます。(サウナも同じ原理です)
輻射熱は空気に影響されず、温度の高い方から低い方へ伝わる性質があり、赤外線によって床で温められた熱が、冷たい壁や天井まで伝わり部屋全体が暖まるのです。
一方、温風(空気)によって部屋を暖めるエアコンやファンヒーターだとそうはいきません。
暖かい空気は上部に、冷たい空気は下部に溜まりやすい性質が関係しており、このタイプの暖房器具だと室内の温度のムラができやすいのです。
メリット③:掃除がいらない
エアコンは、フィルター掃除が必要ですが、床暖房は日常的なお手入れはいらないので、家事の手間も省けます。
(ただし、熱源である給湯器の交換や、不凍液の補充・交換といった手間は発生します)
メリット④:設備が露出していないので部屋が広く使える
石油ストーブやヒーター、エアコンは、機器を部屋に置いて(または壁にかけて)暖めます。
床暖房は設備そのものが床材の下に設置されており、部屋に露出していないのでスペースを取りません。
コンセントにコードをさすこともないので、インテリアの邪魔をせず、部屋を広く使えます。
メリット⑤:火事や事故の心配がない
石油ストーブや電気ヒーターなどは、触れてやけどをしてしまう恐れがあるほか、コードにつまづいてケガをしたり、倒して火事を引き起こすなどのリスクもあります。
床暖房は、小さなお子さんがいても直接熱源に触れることがないので、安心して使用できる点が魅力のひとつです。
ただし、電気式の床暖房は低温やけどに注意が必要です。
メリット⑥:ヒートショックの予防につながる
トイレや洗面脱衣室に床暖房を設置すれば、部屋間の温度差を縮められ、冬に起こりがちなヒートショックの予防につながります。
「電気式」の床暖房だと、狭い空間でも設置可能です。
新築で床暖房を設置する6つのデメリット
新築で床暖房を設置するデメリットは、次の6つが挙げられます。
- ①初期費用が高い
- ②室内が暖まるまで時間がかかる
- ③光熱費が他の暖房器具よりも高い
- ④メンテナンス費用がかかる
- ⑤使える床材が限定される
- ⑥電気式だと低温やけどの恐れがある
それぞれ解説していきます。
デメリット①:初期費用が高い
床暖房は、床材の下に暖房設備を設置するため、他の暖房設備よりも初期費用が高いです。
床暖房の種類 | 設置費用 |
---|---|
電気式 | 5~7万円(1畳あたり) |
温水式 | 30~150万円 |
温水式だと、温水パイプの設置以外にも熱源となる給湯器も必要になるため、電気式よりも全体的にコストがかかります。
デメリット②:室内が暖まるまで時間がかかる
床暖房は、他の暖房器具に比べて室内を暖めるのに時間がかかります。
また、同じ床暖房でも「温水式」よりも「電気式」の方が立ち上がりが遅いです。
温水式の場合、室温15℃の部屋が27℃に達するまでに要する時間は、スイッチを入れてから約30分~1時間かかるといわれています。(※)
※)引用:Panasonic|スイッチを入れてからどれくらいで暖かくなりますか。(温水床暖房について)
デメリット③:光熱費が他の暖房器具よりも高い
床暖房は、エアコンなどの暖房器具に比べて光熱費が割高になる傾向があります。
上記でも解説した通り、スイッチを入れてから部屋が暖まるまでにも時間がかかるので、決してコスパの良い設備とはいえないでしょう。
デメリット④:メンテナンス費用がかかる
床暖房の耐用年数は、約30年とされており、電気式であればメンテナンスも不要です。
一方、温水式の床暖房の場合、約15年ごとに熱源となる給湯器の交換や、不凍液の補充・交換といったメンテナンスが必要になります。
「不凍液」とは、床暖房の温水パイプを通る液体のことで、パイプ内の凍結防止として使われます。(寒冷地だと、普通の水だと凍って破裂してしまう恐れがあるため)
デメリット⑤:使える床材が限定される
床暖房には「床暖房対応」となっている床材を使う必要があります。
一般的な床材を使用してしまうと、収縮して隙間ができたり、反りや割れが生じる恐れがあるためです。
限られた床材の中から選ぶことになるので、希望していたデザインや色味がない場合もあるため、床材にこだわりがある方は事前に確認しておきましょう。
デメリット⑥:電気式だと低温やけどの恐れがある
低温やけどは、44~50℃程度の温度のものに長時間触れることで起こります。
最高温度が40℃程度で安定する「温水式」に比べ、「電気式」は床面の温度が高くなりやすく、低温やけどのリスクがあります。
床暖房は電気式と温水式、どちらを選べば良い?
床暖房は、熱源の種類によって「電気式」と「温水式」の2つのタイプに分類されます。
メリットやデメリットなど、それぞれの特徴を把握して、どちらがご自身のライフスタイルに合っているのか検討しましょう。
電気式の特徴
電気式のメリット | 電気式のデメリット |
---|---|
・温水式よりも初期費用が抑えられる ・メンテナンスの必要がほとんどない ・温水式よりもさまざまな場所に設置しやすい(複雑な間取りに対応しやすい) |
・温水式よりもランニングコストがかかる ・立ち上がりまでに時間がかかる ・場所によっては温度ムラが出てしまうことがある |
温水式の特徴
温水式のメリット | 温水式のデメリット |
---|---|
・電気式よりもランニングコストが抑えられる ・電気式に比べて立ち上がりが早い ・広い面積に対応でき、床全体の温度を均一に暖めてくれる ・電気式に比べて低温やけどの心配がない |
・電気式よりも初期費用が高い ・キッチンやトイレなど狭いスペースの設置には不向き ・定期的なメンテナンスが必要 (熱源である給湯器交換や、不凍液の補充・全交換など) |
家の間取りや(床暖房の設置を考えている)部屋の用途のほか、初期費用に予算をかけるのか、ランニングコスト(維持費や運転費)にお金をかけるのかによって、選ぶべき床暖房のタイプは変わってきます。
初期費用を抑えたいのであれば「電気式」、ランニングコストを抑えたいのであれば「温水式」が良いでしょう。
ただし、温水式でも不凍液の交換といったメンテナンス費用はかかる点に注意が必要です。
床暖房はこんな方に向いています
省エネを重視した「高気密・高断熱住宅」では、そもそも床暖房がなくても快適に過ごせるだけのスペックを備えています。
そのため、これからの時代に新築を建てられる方にとっては、必ずしもおすすめできる設備・・・というわけではありません。
ただし、次の6つの条件に当てはまる方であれば、新築で床暖房を導入しても後悔しにくく、きっと快適に過ごせるでしょう。
- ①予算に余裕のある方
- ②小さいお子さんや高齢者と一緒に住まわれている方
- ③冷え性の方
- ④寒冷地にお住まいの方
- ⑤無垢フローリング材にこだわりのない方
詳しく解説します。
①予算に余裕のある方
床暖房がなくても、エアコンやヒーターがあれば部屋を暖められるので、予算に限りがある場合は、家族にとってもっと必要とされる設備にお金をかけた方が良いです。
一方で、予算に余裕がある方は床暖房を設置すれば、より快適な住まいが手に入るでしょう。
②小さいお子さんや高齢者と一緒に住まわれている方
ストーブなど熱源に直接触れてしまう恐れがある暖房器具は、小さいお子さんにはとても危険です。
床暖房であれば、熱源に直接触れることもなく、特に温水式の床暖房は高温になりにくく、低温やけどの心配もないため小さいお子さんがいるご家庭に向いています。
さらに床暖房を設置することで、部屋と部屋との急激な温度差を生じにくくさせるので、ヒートショックのリスクが増える高齢者にもおすすめです。
③冷え性の方
前述した通り、床暖房は赤外線による「輻射熱」で暖めるタイプの暖房器具です。
輻射熱は温度の高い方から低い方へ伝わる性質があり、冷えた体も内側から甚割と温めてくれます。
末端が冷えがちな冷え性の方にとっては、最適な暖房器具といえます。
④寒冷地にお住まいの方
厳しい寒さが長く続く寒冷地では、暖房器具の出番が多くなります。
部屋を均一に、そして体の芯から温めてくれる床暖房は、冬場でも素足で過ごせる快適性が大きな魅力。
特に寒冷地で家を建てる方におすすめです。
⑤無垢フローリング材にこだわりのない方
「デメリット」の章でも解説した通り、床暖房では使用できる床材が限定されており、特に無垢フローリング材で床暖房対応の商材は少ないです。
無垢材のフローリングに特に大きなこだわりがない方は、床暖房を導入しても後悔が少ないでしょう。
まとめ
床暖房の種類やその特徴、導入によるメリットやデメリットについてご紹介しました。床暖房は導入費用や光熱費が高くなる分、それに見合った快適性を備えています。
家族構成やライフスタイル、予算配分の優先順位を明確にした上で、床暖房を設置するかどうかを決めると良いでしょう。
ぜひ後悔のない家づくりを叶えてくださいね!