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「高性能住宅」ってなに?建てる前に知っておきたい“4つの性能”について解説

家を建てるときには、デザイン性や間取り、立地、日当たりの良さなど重視したいところがいろいろありますよね。

「家の性能」も家づくりにおける重要なポイントのひとつです。

環境問題が叫ばれる現代において、これまで以上に省エネや耐久性に配慮した住宅が求められます。

安全で快適な住宅を実現するために、高性能住宅について考えていきましょう。

今回の記事では、家を計画する前に知っておいてほしい「住宅の4つの性能」について詳しく解説します。

そもそも「高性能住宅」って何のこと?

高性能住宅とは、安心・安全で快適な暮らしを実現するために必要とされる「性能」が備わった家を指します。

高性能住宅には「長期優良住宅」や「ZEH(ゼッチ:ゼロエネルギー住宅)」のような明確な基準や定義はなく、性能のレベルはハウスメーカーや工務店によって異なります。

押さえておきたい「4つの性能」

住宅の性能にはさまざまな種類がありますが、特に重視したい性能は次の4つです。

  1. 断熱性
  2. 気密性
  3. 耐震性
  4. 耐久性

この他にも「耐風性」「耐積雪性」「耐火性」「防音性」「防犯性」といった内容に細分化されます。(※)

ここからは、4つの住宅性能についてそれぞれ解説していきます。

※)参照:新築住宅の住宅性能表示制度ガイド

性能①断熱性

断熱性とは、家の中の熱と外の熱の移動を防ぐ性能のことです。

夏場は外の熱気が、冬場は外の冷気が家の中に入らないように遮断し、冷暖房によって適温になった室内の空気を外に逃がさないのが「断熱」の役目です。

断熱性能が高いほど外気温の影響を受けることなく、室内の冷暖房の効率がアップして快適な室温を保つことができます。

断熱性を高めるためには、次のような方法が挙げられます。

  • 屋根や壁、床下に厚い断熱材を施す
  • 内窓やトリプルガラスなど、断熱性の高い窓にする

断熱性の指標は「UA値(W/㎡・K)」の数値が基準になっており、UA値が小さいほど断熱性能が高いことを示します。

また、断熱性能には1~7の等級があり、等級が高くなるほど地球の環境に配慮した住みやすい住宅になります。(※1)

2030年には、すべての新築にZEH基準である「断熱等級5」への適合が義務化されるといわれており(※2)、東京であれば「UA値=0.6」以上の性能が求められることになるのです。

※1)参照:住宅性能表示制度の見直しについて
※2)参照:家選びの基準変わります – 国土交通省

性能②気密性

気密性とは、家の密閉具合(隙間が多いか、少ないか)を表す性能のことです。

隙間が多い(気密性が低い)家は、外からの空気が家の中に入りやすくなるため、室温を一定に保ちにくくなります。

気密性の高い家であれば外気温に左右されにくくなるだけでなく、花粉やPM2.5、黄砂といった汚染物質が室内に家の中に入り込むのを防いでくれます。

気密性は断熱性を高めるためにも必要なものです。

いくら分厚い断熱材を仕込んでいても、気密性が低いと外からの空気が入ってしまい、安定した室温を保てなくなってしまいます。

また、気密性は「C値(㎠/㎡)」の数値で表され、C値が小さいほど気密性が高いことを示します。

C値については、2009(平成21)年の省エネ法の改正により、国による数値基準が削除されました。

そのため、UA値のように明確な基準値はありません。

現在では、「高気密住宅」と呼ばれる一般的な基準は、C値が「1.0㎠/㎡以下」であると認識されています。

性能③耐震性

耐震性とは、地震での倒壊や崩壊のしにくさを表した性能のことです。

「耐震」と似た言葉に「免振」「制振」がありますが、それぞれの違いは下記の通りです。

耐震 建物の強度を高める構造のこと
免振 建物と地盤を切り離して、地震の揺れを建物に伝えにくくする構造のこと
制振 地震による揺れそのものを吸収・軽減して、被害を最小限に抑える構造のこと

建築基準法の耐震基準には、「旧耐震基準」と「新耐震基準」があり、現在では1981年6月に施行された「新耐震基準」がベースになっています。

耐震等級は1~3までの3段階でランク付けされており、それぞれの基準は下記の表の通りです。

耐震等級 耐震性
1 建築基準法レベル(1倍)
2 建築基準法の1.25倍
3 建築基準法の1.5倍

建築基準法では、「震度6強~7(数百年に一度)程度の大地震で倒壊・崩壊しない」「震度5(数十年に一度)程度の中地震で損傷しない」ことが目安とされています。

性能④耐久性

耐久性とは、家がどれくらい長くもつかを示す性能のことです。

建物を劣化させる原因は様々ありますが、その劣化に対してどれだけ長く抵抗できるかを表します。

一般的な家の寿命は、木造住宅(W造)で約30年、鉄骨住宅(S造)で約30~50年、鉄筋コンクリート造(RC造)で約40~90年程度が目安とされています。

住宅の耐久性を高めるためには、定期的なメンテナンスがとても大切です。

先述した断熱性や気密性、耐震性も家の耐久性に大きく関わっているため、どれか一つを特化させるのではなく、全体的な性能を高めた方が良いでしょう。

たとえば、性能の基準が細かく設定されている長期優良住宅であれば、木造であっても100年超の耐久性があるとされています。(※)

※)参照:期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新期待耐用年数の導出及び内外装 設備の更新による価値向上について P12

高性能住宅のメリット

高性能住宅には、次の4つのメリットが挙げられます。

  1. 1年中快適に過ごせる
  2. 省エネ効果が期待できる
  3. 災害に強い
  4. 補助金や税金の優遇措置が受けられる

それぞれ順に解説していきます。

メリット①1年中快適に過ごせる

断熱性や気密性に優れた高性能住宅は、外気温に左右されにくいため、室内の温度が安定しており一年を通して快適に過ごせます。

部屋と部屋との温度差が生じにくいので、冬場に起こりがちなヒートショックのリスクも軽減できます。

メリット②省エネ効果が期待できる

高性能住宅は、室内の空気を外に逃しにくいのも大きな特長のひとつです。

冷暖房効率がアップし、少ないエネルギーで適温に保つことができるため、結果的に光熱費の削減につながります。

太陽光発電システムを導入していれば、自家発電した電力で生活できるので、さらに省エネ効果が期待できるでしょう。

メリット③災害に強い

耐震性の高い家は、地震や台風などの災害に強いです。

長期優良住宅であれば、最低でも「耐震等級2」の基準を満たしています。

耐震等級2は、避難先として指定されている学校や病院などの基準と一緒です。

2016年4月に発生した熊本地震では、耐震等級3の建物の80%以上が無事であったとのデータがあります。(※)

ただし、耐震等級2では倒壊してしまった建物もあったそうなので、災害に強い家にするには耐震等級3を目指したいところです。

※)参照:「熊本地震における建築物被害の原因 分析を行う委員会」報告書のポイント

メリット④補助金や税金の優遇措置が受けられる

高性能住宅は、税金の優遇措置が受けられたり、国や自治体による補助金や助成金が出たりします。

たとえば、東京都三鷹市では「新エネルギー・省エネルギー設備設置助成金」という制度が実施されていました。

太陽光発電システムやエネファーム、エコキュートなどの省エネ設備を設置したときや、開口部を高断熱窓や高断熱ドアにしたときに、助成金が支給されるというものです。

令和5年度分の申請はすでに終了していますが、今後も新たな助成金制度ができる可能性があるので、情報はこまめにチェックしておきたいですね。

参照:三鷹市 |新エネルギー・省エネルギー設備設置助成金(令和5年度)

そのほかに、長期優良住宅やZEH水準の省エネ住宅(※1)を建てるときには、住宅ローン減税や補助金、低金利のローンが活用できるなどの優遇措置があります。

ここで注意しておきたいのが「住宅ローン減税」についてです。

住宅ローン減税とは、住宅を購入する際にローンを組んだ場合、毎年末に住宅ローンの残高に対して最大0.7%が所得税から控除される減税措置のことです。

これまではどの住宅でも一律で控除を受けられました。

しかし、法改正により2024年1月以降に建てた家(建築確認を受けた新築住宅)は、省エネ基準に適合していないと住宅ローン減税を受けられなくなってしまったのです。(※2)

これから家を建てられる方は、これらの優遇措置や制度内容の変更についてもしっかり把握しておきましょう。

※1)参照:優遇措置で建てたい人を応援!|経済的にオトクに!|家選びの基準変わります – 国土交通省ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス 推進に向けた取り組み
※2)参照:住宅の供給に携わる事業者の皆様へ

高性能住宅のデメリット

ここからは、高性能住宅のデメリットについて解説します。

主なデメリットは次の2つです。

  1. 建築費用が高くなってしまう
  2. 空気がこもりやすくなる

順番に見ていきましょう。

建築費用が高くなってしまう

高性能住宅は、一般的な住宅に比べてイニシャルコスト(初期費用)がかかります。

断熱材を厚くしたり高品質な素材を使用したり、建築工法にこだわったりすれば、必然的に建築費用はかさんでしまうもの。

しかし、長期的な視野でみた場合、省エネ効果による光熱費削減やメンテナンス費などのランニングコスト(維持費用)を抑えられる利点があります。

先述した通り、2024年以降に建てる家については省エネ住宅のみが住宅ローン減税(控除)を受けられるため、経済的なメリットは大きいといえるでしょう。

空気がこもりやすくなる

高性能住宅は気密性が高いため、家の中の空気がこもりやすいデメリットがあります。

空気がこもってしまうと、シックハウス症候群のリスクが高まります。

そこで重要なのが、2003年の法改正で設置が義務付けられた「24時間換気システム」です。

気密性の高い家であれば換気効率もよく、空気がこもる心配もありません。

ただし、換気システムの設置は義務付けられているものの、実際には稼働していないお宅が多いのが現状です。

室内の空気をキレイに保つためにも、換気システムは「常に稼働させておくこと」を意識しましょう。

まとめ

今回は、住宅の4つの性能についてご紹介しました。

地球温暖化の影響もあり、国も省エネ基準を満たした住宅の普及を推進しています。

高性能住宅は、環境にやさしいことはもちろん、住む人にとっても快適に暮らせる点が最大のメリットです。

夏は涼しく冬は暖かく・・・。
災害にも強い高性能住宅で、ぜひ理想の住まいを実現させてくださいね。

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